口腔清掃の歴史(古代~中世)

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口腔清掃の歴史(古代~中世)

古代において、世界のどこを見ても現代の歯ブラシと同じ形態のものは発見されてはいません。しかし、様々な用具を用いて食べ残しを除去したり、歯を磨いたり、口内の清涼感を得たりはしていたようです。世界各地での口腔清掃は、どれも医学的な理由からではなく、信仰の中で神に祈りを捧げる前の作法のひとつとして起こったという点で共通しています。
紀元前5世紀ごろの古代ギリシアでは、口臭改善の治療としてヒポクラテスが、羊毛を使い、歯磨剤で歯をこすったあとに、水で口をすすぐことを推奨したとされています。
紀元前3世紀ごろのメソポタミア文明の墓からは、現存する最古の爪楊枝と考えられている黄金の小楊枝が発見されています。
インドでは、古代の医書に、口腔洗浄、歯ブラシ、歯磨剤、歯石除去についての記述が残っています。このときの歯ブラシとは虫食いのない木の枝(灌木)のことで、それを噛んで房状にしたものを使い、朝早くに歯を磨いていたと考えられています。
中国では、古くから金属製の小楊枝が使用されていました。房楊枝は1世紀ごろにインドから伝わったようです。
日本では、古代のものと思われる人骨の歯の側面に摩耗が見られたことから、詳しい方法まではわかりませんが、何らかの用具で歯を磨いていたと推測できます。
日本では、6世紀ごろ仏教の伝来と前後して中国から楊枝が伝わったと言われています。もともと神道の「禊」のひとつとして行われていた口をゆすぐ行為に加えて、楊枝が使われるようになりました。平安時代には、貴族や僧の間で、朝に楊枝を用いての口内清掃が広まっていたようです。
また10世紀ごろの中国の王の墓から発見された埋葬品の中に、現代のような形状の歯ブラシが2本含まれており、徐々に房楊枝が廃れ、歯ブラシで口内清掃を行うようになっていったと考えられます。

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