口腔清掃の歴史(近世~現代)

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口腔清掃の歴史(近世~現代)

西洋における最初の歯ブラシは ,18世紀後半にイギリス人によって作られた、獣の骨に穴をあけた柄に獣毛を針金で留めたものだと言われています。しかし毛も固く粗悪だったため、このころは歯科医の手で歯を清掃してもらったあと、毎朝自分でぬるま湯で口をゆすぎ、さらに水に浸した上等な海綿で、歯を上から下へ、下から上へと磨くのが最もよい方法だと考えられていました。さらに、海綿を浸す水にブランデーを少量混ぜると、歯肉を強くするなどの効果があるとも考えられ、歯を清掃する際の歯磨き粉や洗口剤の併用もはじまっていました。
日本では、19世紀後半までは、江戸時代にみられた「楊枝(房楊枝や爪楊枝)」での歯や舌の清掃が主でしたが、諸外国との交流が盛んになり、歯科医学においてアメリカの影響を非常に強く受けるようになると、明治になって歯ブラシが製造 ・販売されるようになりました。
初期の歯ブラシは,鯨のヒゲで作った持ち手に馬毛を植えたものでしたが, 次第に牛骨が使われるようになり、大正に入るころにはセルロイドへと移行していきました。しかし、戦中から戦後にかけてセルロイドの入手が困難になったため、木や竹で作られることが増えました。植毛では、関東大震災までは牛や馬の毛を使用していましたが、震災後に不足したことから豚毛が代わりに使われるようになったようです。
歯ブラシが庶民に普及し始めたのは明治の20年代はじめと考えられていますが、口腔内の清掃用具として完全に認知されたのは、明治20年代の終わりごろだと言われています。このころは、歯の清掃とともに舌の清掃も盛んになり、歯ブラシの把柄を薄くしてへら状にした舌かき用の歯ブラシが売られ、使われていたようです。
一方歯ブラシの製造も、明治のはじめに穴あけ機が登場、また明治の後半に植毛機が輸入されたことにより、手工業から機械化が進みました。本格的な機械化、材料などの開発は、戦後急激に発展しました。特に、樹脂とナイロンの出現は画期的で、大量生産を可能にしました。そしてまた、樹脂とナイロン毛は、より良いものへと改良が続けられています。さらにブラッシング方法なども重要視されるようになったことから、新しい形状の歯ブラシも開発され、進化を続けています。

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